project

水戸まちなかデザイン会議
MITO LIVING ISLANDプロジェクト〈前編〉

まちづくりを自分ゴト化する、水戸まちなか再生に向けた取り組み

 

茨城県水戸市の中心市街地(以降、水戸まちなか)は、長らく広域都市圏の核として中心性を維持してきたが、2000年代に入り、急激な歩行者通行量の減少や空き店舗・空き地が増加するなど、深刻な空洞化が待ったなしで進行している。国土交通省による「官民連携まちなか再生推進事業」の補助金採択をうけ、水戸市や沿道企業・商店等の官民構成員から成るまちづくり協議会(以降、協議会)により、車から人中心の都市空間再編にむけた取り組みであるウォーカブル関連事業がエリア再生の望みをかけ実施された。水戸まちなかは自身の生まれ育った故郷であり、協議会の専門委員としてこの取り組みに参画。エリアビジョン「MITO LIVING ISLAND構想」の策定、市民参画プラットフォーム「水戸まちなかデザイン会議」の組閣、実証実験「水戸まちなかリビング作戦」(後編)を主導することとなった。

 

持続可能性の高いウォーカブルな都市空間の実現は、車社会の地方都市で極めて困難な挑戦である。空洞化の要因を一概に捉えることは難しいが、「当事者組織の無関心」が大きな要因であることに気づいた。着実な変化の兆しを感じ取れるものにしたいと考え、当該エリアの「当事者組織」の意識変革を待たず、まちづくりに自分ゴトで取り組む「個人的共感者」の獲得を目指した。

 

そのためにまず、ウォーカブルまちづくりの基本方針となる、エリアビジョン「MITO LIVING ISLAND」構想を作りオンラインシンポジウムで公開。ビッグデータ解析も組み合わせた緻密なリサーチに、地元若手の想いを加え、水戸の地形骨格に根差したユニークなコンセプトを導出。500年ほど前には河川と湖に囲まれる中に、ぽっかりと浮かんだように見えていただろう水戸の市街地形状を、「ISLAND CITY」と形容し、コンパクトシティに相応しい特徴を評価したライフスタイルの提案だ。シンポジウムは好評となり、水戸市民のみならず、水戸出身で他県で活動する多くの方々から、「自分も取り組みに関わりたい」というの声をいただくことができた。
そしてシンポジウムより3か月後の2021年5月、まちづくりプラットフォーム「水戸まちなかデザイン会議」を始動した。参加メンバーは任命制ではなく、エリアビジョンの価値観に共感する誰もが参加できるよう公募を行った。但し前向きな議論を深めるため、意見に基づいた実行を他者にゆだねるのではなく、「自分ゴト」で考え行動できること、を条件とした。デザイン会議では、自分ゴト化のきっかけ作りとして、インプットとアウトプット×頭と身体を使うワークショッププログラムを設計し、約半年間で合計10回を開催。地元の学生、行政職員や不動産オーナー、大手メーカー支店責任者に加え、都内で活動するクリエイターなど18歳から68歳までの約450人もの人々に参画いただいた。
こうした活動を踏まえ、2021年10月の3週間、都市空間活用実験「水戸まちなかリビング作戦―みんなで作ろう、新しいまちなかの日常。」を実施し、未来ビジョン案の妥当性検証を行った。水戸まちなかリビング作戦は、現在も協議会により継続されている。

photo: 新井達也(Graphy)

movie: 新井達也(Graphy)

data

主要用途

公共空間

対象地

茨城県水戸市 中心市街地

実施主体

水戸のまちなか大通り等魅力向上検討協議会

対象面積

約157ha

実施年

2020年9月~2022年3月

credit

企画・制作

中山佳子

運営事務局

株式会社ミカミ

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