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水戸まちなかリビング作戦
MITO LIVING ISLANDプロジェクト〈後編〉
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空間デザイン / プロジェクトデザイン / デザインマネジメント / グラフィックデザイン / サインデザイン / 照明デザイン / 地域デザイン / 官民連携まちづくり / 市民参画
空洞化が深刻な茨城県水戸市中心市街地(以降、水戸まちなか)における、車から人中心のまちづくりに向けた空間活用実験の会場デザイン。まちづくり協議会の専門委員として、エリアビジョン「MITO LIVING ISLAND構想」の策定、市民参画プラットフォーム「水戸まちなかデザイン会議」の組閣(前編を参照)を踏まえ、2021年10月の3週間、都市空間活用実験「水戸まちなかリビング作戦―みんなで作ろう、新しいまちなかの日常。」を実施した。
空地、広場、屋上、貫通通路、道路など、何気ない都市空間に着目し、人のための居場所作りを試みた。敷地は、南町2丁目の大通り・裏通りの約500m区間沿道に点在する、屋内外の立地特性と規模の異なる10の場所。会場計画として、6つの滞在空間と、それらをつなぐ4つの動線空間とした。圧倒的な低予算、短期間、広範囲という極めて厳しい条件の中、場所がもつコンテクストを丁寧に解読し、グラフィック・サインデザインや照明デザイン、インスタレーションといった費用対効果の高い手法を用い、既存のポテンシャルを最小限の操作で最大化するデザインを施した。なかでも、人優先のストリートを目指した市道における道路占用実験「LIVING STREET」では、車速抑制を狙うデバイスとなるレモンイエローのストリートサインを施し、時速25km以上の車両を最大15%減少、急ブレーキの回数を8割ほど減少させることに成功した。
実験期間中には、「水戸まちなかチャレンジ」と題し、市民参画プラットフォームに集ったメンバーに自主的活用企画を募り実施いただいた。屋上空間「ROOFTOP PARK」を活用した茨大生によるカフェや、まちかど広場「LIVING PARK」での児童レクリエーションコーナー、車庫を改造した休憩スペース「LIVING GATE」での水戸老舗茶屋による出張店舗など合計10組のチャレンジが生まれた。そこで、それらの活動に一体感が生まれるよう、エリアビジョンの思想を体現したロゴマークやカラースキーム等を定めたデザインガイドラインを制作し配布。メンバーによる多彩なオリジナルプロダクトが生み出された。
実証実験を通じ、当初に設定した目的―①人中心の居場所作りは需要があるか? ②市民参画型プロセスは適合するか?―これらの問いに対し、①来場者による約93%のウォーカブルまちづくりへの取り組み継続要望、②合計450人のプラットフォーム参加者から、合計10組の自主的空間活用企画が実現、という成果が生まれた。また、住民らに行ったアンケートでは、実験前後でエリアビジョン案への支持率が約20%向上した。
そして実験終了から3年、仮設を前提とした実験会場の約半数が利用者の要望を受けて継続した。商店街や水戸市の管理のもと、パブリックスペースとして日常に根付いている。それは、まちなかに住む愛犬家とワンちゃんのとっておきのお散歩ルートであり、高校生たちが放課後に語らえる居場所であったりと個々の空間はささやかなものだが、まちなかで生きる人たちの新しい日常に寄り添っている。
さらに、実験会場となった民間ビルを保有するオーナーにより、クラウドファンディングも活用した資金調達を経て、空間活用が水戸読売会館ビル(実験時はLIVING GATE)、AT WORK BLDG.(実験時はROOFTOP PARK)の2か所で事業化されるに至った。二人のオーナーの人間的魅力が生み出す吸引力も相俟って、この2か所を中心に新しいチャレンジが生まれている。
一連の取り組みを通し、当初に設定した目標であるまちづくりへの「個人的共感者」の発掘は、その波及効果を鑑みれば一定の成果をおさめたといっていいだろう。水戸まちなかで生まれた「個人的共感者」同士の連携が、「当事者組織」の意識改革につながり、より持続的かつ長期的な都市再生の取り組みにつながることを期待する。
data
主要用途
都市空間活用実験の会場計画
公共空間(広場、休憩所、カフェ、道路、通路、ドッグラン等)
対象地
茨城県水戸市南町2丁目、3丁目の大通り・裏通り
実施主体
水戸のまちなか大通り等魅力向上検討協議会
対象面積
4.64ha
建築面積
6,170㎡
延床面積
6,170㎡
実施年
2021年10月9日~31日
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企画・制作
中山佳子 / 平田輝満(茨城大学) / 石田 典惣(水戸市商工会議所青年部) / 藤奏一郎 / 圷裕樹
空間デザイン
中山佳子 / 藤奏一郎
サインデザイン
中山佳子
照明デザイン
安藤健太郎(コイズミ照明水戸営業所) / 原大智(トキ・コーポレーション)
音響デザイン
神山健太 / 神山聴景事務所
施工
アコオ / 鈴木電気商会 / マイスター
協力
小田木健治 / 加藤久人 / 田部田英智(水戸市) / 水戸市都市計画部都市計画課 / 水戸市産業経済部商工課 / 水戸読売会館ビル / AT WORK BLDG. / 南町2丁目商店街 / 水戸まちなかデザイン会議の皆様
運営事務局
株式会社ミカミ
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